疾患レポート
膿皮症 | ||
膿皮症は、皮膚において細菌が増殖し、感染が起きている状態のことです。 主にブドウ球菌の感染によるものが多いとされています。 | ||
【症状】 | ||
・痒み ・皮膚の炎症による赤み ・脱毛 ・フケが出る など 痒みがひどい場合はその患部を掻き壊したりして出血する場合もあります。 |
||
【治療】 | ||
・適切な抗菌薬の投与 ・抗菌性のシャンプーで洗浄したり、保湿を行ったりする 。 |
||
近年、抗菌薬に対して抵抗性を示すような細菌も見られるようですので、これらの治療に反応しない場合は、どの抗菌薬が効果的なのかを検査する必要があります。 | ||
写真左:黄丸で囲った箇所は痂疲(かさぶた)、矢印は発赤が認められます。 写真右:目の周りが腫れていて痒そうです。この子はアレルギーを伴っていました。 |
外耳炎 | ||
外耳炎は、外耳道が何らかの原因により炎症を起こす疾患です。 | ||
【症状】 | ||
・痒み ・耳の痒み →これにより床に耳を擦り付けたり、後ろ足で掻いたり、激しく首を振る場合があります。 ・耳の中が耳垢で汚れて、異臭を放つ |
||
【原因】 | ||
① 犬種:耳の垂れている犬種や耳の中に毛が生える犬種は通気性が悪く悪化しやすい傾向にあります。 ② 環境:高温多湿(特に夏場) ③ 感染:ミミダニや毛包虫といった“寄生虫”やマラセチアと呼ばれる“酵母”、膿皮症でも登場したブドウ球菌(“細菌”)などが原因となることが多いようです。 ④ その他:アレルギー性皮膚炎のある子、耳の中に腫瘍ができている子などもなりやすいとされます。 |
||
【治療】 | ||
上のような原因から、どの治療が適しているのかを考え、治療を行います。 耳の中に毛があれば抜いたりします。菌が存在していれば、抗菌薬を投与したり、外用薬を点耳したりします。ひどい場合は耳の中を洗浄するのも効果的です。 |
||
外耳炎を放置すると中耳炎へ発展する場合があり、首が傾いたり、眼が揺れたりなど(末梢性前庭疾患)の症状が出てしまうこともありますので、外耳炎の症状があるときは早めに適切な処置を行うことが望まれます。 | ||
今年はもう暑い日々は終わりを告げましたが、これらの症状で来院された方が多かったので久しぶりに投稿してみました。 皮膚病に関してはこれだけでなく、様々な原因と疾患があります。悩んでおられる方がいらっしゃいましたら、ご相談ください。 (下に寄生虫を原因とするものを一例として挙げておきます) |
||
皮膚は象皮様に腫れて赤くなり、全身的な脱毛とフケも多数みられました。また、出血もあり、激しい痒み、痛みがありました(写真は足です)。 この子の皮膚の検査を行ったところ、右のような毛包虫(矢印)が多数認められました。 そのため、駆虫薬を飲ませて、適切な治療を行ったところ、まだいくらか赤みはあるものの、毛も生え、下写真くらいまで改善しました。痒みも減り、“怒る”ことがなくなったようです。 |
||
このようにうまく改善する場合もありますが、なかなか治療に反応しない場合などもあり、苦慮することもあります。焦らないで適正な処置を継続することが重要かもしれませんね。 |
・今回は脳神経疾患を離れ、緊急疾患のひとつである「子宮蓄膿症」についてふれたいと思います。
子宮蓄膿症 | ||
子宮蓄膿症は、文字通り、子宮内に細菌感染が起こり、膿がたまる病気です。 この病気は長い間ホルモンの影響を受けた高齢の出産していない犬や長期間繁殖を行っていない犬で多く見られます。しかし、中には若くして発症するものも見られます。 猫は犬と排卵形態が異なるため、若齢での発症が多いようです。 |
||
【症状】 | ||
症状として、犬では一般的に、食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満などが見られます。猫は症状があまり顕著ではありません。 また陰部からの排膿は認められないこともあります(閉鎖性子宮蓄膿症)。 | ||
【診断】 | ||
血液検査による白血球数増加、CRP(炎症マーカー)の上昇などが認められることがあります。また超音波検査によって液体の貯留した子宮を確認することによっても診断ができます。 進行すると、腎不全や播種性血管内凝固(DIC)を起こすなどして死に至る事があります。 |
||
【治療】 | ||
多くは上述症状が出てから病院に受診することが多いため、緊急疾患として外科的に卵巣・子宮摘出術を行うことが一般的とされています。内科的治療にはホルモン剤による強制的な排膿促進や抗生剤投与がありますが、再発のリスクが高いように思われます。 | ||
左の写真は子宮をお腹から出したところの写真です。矢印のところは少し太くなり(左)、子宮卵巣摘出後、子宮を切開すると膿の液体が出てきました(右赤丸) | ||
子宮蓄膿症は不妊手術をしていれば100%予防できる病気のひとつです。 病気になってからの手術よりも、健康な状態での手術の方が圧倒的にリスクは少ないことを考えれば、若齢(1歳未満)での卵巣・子宮摘出をお勧めします。 まだ不妊手術を行っていないお家の子がいましたら、1度検討されてみてはいかがでしょうか? |
脳神経疾患
・今回は脳神経疾患の1つとして、てんかん発作について紹介したいと思います。
発作といっても様々な原因があります。例えば、心臓の不整脈や虚血性心疾患が原因となる心臓発作でも起きますが、短時間かつ発作からの回復が早いのが特徴です。
しかし、てんかん発作の場合は、発作後の回復までに時間がかかることが多いのです
。
てんかん | ||
「てんかん」とは、大脳皮質神経細胞の過剰な興奮によって起こる、けいれんなどの発作性症状を繰り返す慢性疾患として定義されています。そのため、1回のみの発作症状はてんかんとは診断しません。 | ||
【分類】 | ||
動物のてんかん分類は以下に分けることが多いです。 | ||
1 特発性てんかん 病因不明だが、脳に器質的病変がなく、発作を引き起こすものです。つまり、簡単に言えば、脳には異常がないということです。初発年齢は若齢(5歳以下)が多いとされています。 |
||
2 症候性てんかん 脳の先天性奇形、脳腫瘍、脳血管障害などの器質的病変が存在し、原因となっているものです。つまり、脳に異常があるということです。 |
||
3 潜在性てんかん 脳に何らかの病因があるが、病態が不明のもの。「おそらく症候性てんかん」とも呼ばれます。 |
||
つまり、若くして起き、発作以外の神経症状(ふらつきや震えなど)がみられない発作は、特発性であることが多いです。 ある程度年齢(中年~老齢)が重ねてから起こす発作には、脳腫瘍などの可能性を疑います。異常が存在するかしないかの判断は、MRI検査による診断が必要です。 |
||
写真は脳のMRI画像。赤丸と矢印はそれぞれ脳腫瘍を示しています。 | ||
【治療】 | ||
治療には飲み薬の「抗てんかん薬」を使用します。 特発性てんかんに対しては、これだけでコントロールがつくものがほとんどですが、中には難治性のものもあり、ひどい場合は発作が止まらない状態(重積)になるものもあります。 こういった場合には、発作がある程度落ち着くまで、飲み薬ではなく、注射薬による治療を行います。 症候性てんかんに対しては、原因となる脳疾患の治療を行いつつ、抗てんかん薬の投与を行います 。 |
椎間板ヘルニア | ||
「椎間板ヘルニア」といえば、ミニチュア・ダックスフンドがよく発症する病気とされていますが、その他にもペキニーズ、アメリカンコッカー・スパニエル、ビーグル、シーズー、そして、近年人気犬種であるトイ・プードルにもよく見られる病気です。 | ||
【概要】 | ||
犬の脊椎は首(頸椎)に7個、胸(胸椎)に13個、腰(腰椎)に7個および仙椎から構成されています。この背骨の間には一部を除き「椎間板」というクッションのようなものがあり、椎間板の中心には「髄核」と呼ばれるもの存在します。 椎間板ヘルニアはこの髄核が脊髄を圧迫することにより、神経機能の低下を引き起こします。 |
||
【症状】 | ||
症状としては、痛みだけのものからまったく後ろ足が動かなくなる(場合によっては脊髄が変性し、1週間ほどで死んでしまう)もの、首のヘルニアの場合は前足も動かなくなり寝たきりになってしまうものまで様々です。 | ||
【診断法】 | ||
最も有効な検査方法として、MRI検査があります。ただし全身麻酔によって静置しないと撮像できません。この検査の前にはしっかりとした神経のチェック(神経学的検査)を行い、見極めることが重要となります。 | ||
T2強調像矢状断像 | ||
T2強調像横断像 | ||
写真は脊髄のMRI画像です。 赤丸と矢印は圧迫病変を示す。一番右は正常な脊髄の横断像。 |
||
【治療】 | ||
程度の軽いものであれば安静と内服薬による内科治療で緩和されますが、後ろ足の動かない(麻痺)状態であれば手術が必要となります。 |
おうちの子に、もしこのよう症状が出た場合にはご相談ください。